食後に毎回腹痛を起こす…食後の腹痛の原因は?
食後、あるいは食べている途中から毎回腹痛がする、ということはありませんか?そんな状況では、せっかくのおいしい食事も、楽しむことができませんね。
食後に毎回腹痛が起きる原因としては、食生活の乱れ、ストレス、ピロリ菌感染、食中毒などがあります。また、機能性ディスペプシア、慢性膵炎などの病気も疑われます。
みぞおち辺りも痛む
みぞおちが痛むというときには、特に機能性ディスペプシアが疑われます。
機能性ディスペプシアに見られるその他の症状としては、胃もたれ、早期膨満感などが挙げられます。早期膨満感とは、食事の途中で満腹を感じ、十分な量を食べられない状態を指します。
特に脂っこいものやアルコール摂取をした後に痛む
脂っこいもの、アルコールを摂取したときに腹痛が生じるときには、特に慢性膵炎が疑われます。
慢性膵炎に見られるその他の症状としては、背中の痛み、下痢、体重減少などが挙げられます。
便秘や下痢を繰り返している
腹痛に加えて、便秘と下痢の繰り返しがある場合には、過敏性腸症候群が疑われます。
過敏性腸症候群のその他の症状としては、単独の便秘や下痢があります。排便によって、これらの症状が一時的に解消されるもの特徴です。
食後に腹痛を起こす可能性のある病気
機能性ディスペプシア
食後に腹痛、胃もたれ、早期膨満感(食事の途中ですぐに満腹感が訪れる)などの症状がありながら、胃カメラやエコー、腹部CTなどの検査で明らかな原因が認められない病気です。
ストレス、食べ過ぎ、飲み過ぎ、不規則な食生活、喫煙などが発症と関係しているのではないか、と言われています。
機能性ディスペプシアの治療
原因として疑われる食べ過ぎ、飲み過ぎ、不規則な食生活、喫煙などをできるだけ避けるなど、生活習慣の改善を行います。ストレス、睡眠不足を避けることも大切です。
その他、胃酸の分泌を抑える薬、消化管の運動を助ける薬などを使用した薬物療法、ピロリ菌の除菌治療などが行われます。必要に応じて、抗うつ薬、抗不安薬を処方することもあります。
早期慢性膵炎
慢性膵炎の早期の段階を指す疾患です。早期慢性膵炎は、食後の腹痛などの症状が見られながら、腹部エコーやCTでは明らかな異常が認められません。これは機能性ディスペプシアと似通った所見であり、この症状が見られる場合には両疾患の可能性を十分に考慮しなくてはなりません。早期に診断し、適切な治療を行うことで進行の抑制が期待できます。
しかし、確定診断では超音波内視鏡(EUS)が必要になります。EUSは先端に超音波端子のついた特殊なコンベックス型超音波内視鏡を用いて、胃や十二指腸の壁から直接すい臓を観察します。超音波の障害となる腸管や脂肪がないため、多くの人で詳細にすい臓を評価が可能となります。
早期慢性膵炎の診断においては超音波内視鏡による画像診断が必須であり、点状高エコー(Hyperechoic foci)、蜂巣状分葉エコー(Lobularity)、Hyperechoic duct marginなどが認められる必要があります。超音波内視鏡による確定診断をご希望の場合には、提携している病院をご紹介いたします。
慢性膵炎
長期にわたってすい臓の炎症が続き、食べ物の消化、インスリンなどのホルモン分泌が不十分になる病気です。40~50代によく見られます。膵液の流れが滞ることですい臓の正常細胞が破壊され、すい臓が線維化したり、膵石が生じたりといったことも起こります。
食後の腹痛、背中の痛みなどの症状を伴います。これらの痛みは病気の進行とともに軽減されていくものの、インスリンの分泌機能などは低下していきます。
原因としては、長期間のアルコールの過剰摂取、ストレス、胆石などが挙げられます。
過敏性腸症候群
大腸に明らかな病変がないにもかかわらず、腹部痛、便秘・下痢などの症状が数か月にわたって続く病気です。
はっきりとした原因はまだ分かっていませんが、ストレスなどが関係しているのではないかと言われています。
過敏性腸症候群の分類
過敏性腸症候群は、以下のように分類されます。
※下記の表は左右にスクロールできます
定義 | 特徴 | |
---|---|---|
便秘型 | 硬便・コロコロした便が25%以上 軟便・水様便が25%未満 |
・下腹部が苦しい ・女性に多い ・ストレスが高まると便秘が強まる |
下痢型 | 軟便・水様便が25%以上 硬便・コロコロした便が25%未満 |
・1日に何度も下痢がある ・男性に多い ・ストレスが高まると下痢が強まる |
混合型 | 硬便・コロコロした便 軟便・水様便のいずれも25%以上 |
・ストレスが高まると便秘と下痢を繰り返す |
ガス型 | おならが頻繁に出る、人前で我慢できない | ・腰痛を伴うこともある |
過敏性腸症候群の治療
食べ過ぎ(特に脂っこいものの)、飲み過ぎ避ける、適度な運動をする、質の良い睡眠をとる、ストレスを溜めないといった生活習慣の指導を行います。
加えて、腸の運動を整える薬、便秘の際には便をやわらかくする薬などによる薬物療法も行います。必要に応じて、抗うつ薬、抗不安薬を処方することもあります。
ガス型へのFODMAP療法
過敏性腸症候群のガス型に対する治療として、FODMAP療法というものがあります。
これは、発酵性のある糖質の摂取を避けることで、ガス(おなら)の症状の軽減を図る食事療法です。発酵性の高い食品にはもともと腸の働きを促進する作用があり、お腹の調子が悪いときに摂取することで症状が改善することがありますが、こと過敏性腸症候群に対しては、その作用がガスを誘発することになってしまいます。
FODMAP療法では、以下の表の「高FODMAP食」を避け、「低FODMAP食」を摂ります。
高FODMAP食を完璧に食事から除去するのは困難ですが、ある程度意識するだけも効果が期待できます。神経質になりすぎないように取り組むことが大切です。
※下記の表は左右にスクロールできます
高FODMAP食 (避けるべき食品) |
低FODMAP食 | |
---|---|---|
穀類 | ・大麦、小麦、ライ麦 ・とうもろこし ・パン ・ピザ ・ラーメン、うどん、そうめん ・粉もの(お好み焼きなど) ・シリアル ・洋菓子 |
・米、玄米 ・十割そば ・オートミール、オート麦 ・こんにゃく麺 ・タコス ・米粉類 ・コーンスターチ ・ビーフン ・ポップコーン ・フォー |
野菜・いも類 | ・アスパラガス ・ごぼう ・豆類 ・セロリ ・納豆 ・キムチ ・ネギ、ニラ ・ゴーヤ ・フライドポテト ・さつまいも、きくいも、たろいも ・玉ねぎ ・にんにく ・マッシュルーム ・カリフラワー ・らっきょう |
・なす ・しょうが ・トマト ・オクラ ・ブロッコリー ・レタス、キャベツ ・ニンジン ・たけのこ ・ピーマン ・もやし ・ほうれん草 ・チンゲン菜 ・かぼちゃ ・白菜 ・きゅうり ・かぶ ・じゃがいも |
調味料など | ・ハチミツ ・カレールウ ・オリゴ糖 ・ブイヨン ・果糖ブドウ糖液糖 ・固形スープ ・ソルトビール ・キシリトール ・バルサミコ酢 ・トマトケチャップ ・大豆由来の豆乳 ・バーベキューソース ・カスタード |
・マヨネーズ ・オリーブオイル、魚油、キャノーラ油 ・マーマレード ・酢 ・ピーナッツバター ・トマトの缶詰 ・メープルシロップ ・ココア ・大豆抽出物由来の豆乳 ・ココナッツオイル ・味噌 |
乳製品 | ・牛乳 ・ヨーグルト ・カッテージチーズ ・ブルーチーズ ・アイスクリーム ・クリームチーズ ・ミルクチョコレート ・プリン ・コンデンスミルク |
・ゴルゴンゾーラチーズ |
果物 | ・リンゴ ・西洋梨、梨 ・スイカ ・パパイヤ ・杏子 ・パパイヤ ・桃 ・干しブドウ ・プルーン ・グレープフルーツ ・いちじく ・アボカド ・プラム ・ライチ ・マンゴー ・ドライフルーツ ・柿 |
・バナナ ・きんかん ・イチゴ ・パイナップル ・ココナッツ ・ライム ・ぶどう ・ラズベリー ・メロン ・ブルーベリー ・キウイ ・クランベリー ・オレンジ ・スターフルーツ ・みかん ・ドリアン ・レモン ・ドラゴンフルーツ |
飲み物 | ・リンゴジュース ・マンゴージュース ・オレンジジュース ・梨ジュース ・ハチミツ入りジュース ・チャイ ・ウーロン茶 ・ハーブティー ・カモミールティー ・エナジードリンク類 ・レモネード(加糖) ・マルチビタミンジュース ・ラム酒 ・リンゴ酒 ・甘いワイン ・麦芽コーヒー |
・水 ・レモンジュース ・ライムジュース ・クランベリージュース ・レモネード(無糖) ・紅茶、コーヒー ・緑茶 ・ビール ・ジン ・ウォッカ ・ウイスキー ・日本酒 ・甘くないワイン |
肉類 | ・魚の缶詰 ・ソーセージ |
・ハムやベーコンなど加工肉を含む肉類全般 ・卵 ・魚介類全般 |
ナッツ類 | ・カシューナッツ ・ピスタチオ ・アーモンド ・黄な粉 ・あんこ ・小豆 ・わさび |
食後の腹痛Q&A
食事をした後、1時間ぐらいすると腹痛を起こします。胃よりも腸が痛むような感じです。何の病気が考えられますか?
頻繁に食後、下痢を起こしたり、便秘が起こるような方については過敏性腸症候群の可能性があります。主な症状としては、腹痛が起こるが排便をすると改善するなどが挙げられます。原因として背景に精神的なストレスなどがあることが多くあります。
腸脳相関という言葉もあるように、脳と消化管は密接な関係があります。ストレスで脳が興奮すると、腸蠕動運動も内臓感覚も異常になりやすく、腹痛、便秘や下痢などの症状を起こすと考えられています。しかし、症状だけで過敏性腸症候群と診断することは危険です。
症状が持続する場合は、大腸カメラにて癌や潰瘍性大腸炎などの器質的疾患を否定することが重要です。
毎日といっていいほど食後の腹痛襲われ、トイレに行きたくなります。ただの胃もたれなのでしょうか?
食後の腹痛においては、胃の方が痛くなるのか腸の方が痛くなるのかが問題となります。この症状においては、下腹部の痛みであり、腸管由来の痛みを考えます。トイレ行くことで改善するのであれば、過敏性腸症候群を疑います。しかし、過敏性腸症候群は除外診断といって、明らかな疾患が否定されてからの除外診断になりますので、症状のみで診断するのではなく患者様のお話をお伺いし、背景疾患の有無、内服薬、アレルギーの有無を評価し、必要な検査を行い、診断します。まずは相談いただければ、と考えます。
ここ最近、食後におへその上の方が痛みます。一度受診した方がいいでしょうか?
おへその上のあたりは心窩部といい、胃や十二指腸のある部位です。一般的に胃潰瘍や胃炎では食事により痛みが悪くなりますが、十二指腸潰瘍では食事により痛みが改善することが多いです。また、脂質を多く含んだ食事をとった際に痛みが悪くなる場合は胆嚢結石や総胆管結石の可能性もあります。一度受診して検査を受けることをおすすめします。
食後の腹痛でお悩みの方は一度当院までご相談ください
1日に3回とる食事のたびに腹痛が起こるというのは、とても辛い状況かと思います。
「病気だったらどうしよう」というお気持ちがあるかもしれませんが、そのままではQOLが低下してしまいますし、何より病気であった場合にはその進行が懸念されます。
丁寧な問診と適切な検査、正確な診断により、患者様のご不安を解消するとともに、病気・症状の改善に努めて参りますので、どうぞお気軽にご相談ください。より高度な検査、高度な治療が必要になったときには、速やかに提携する医療機関をご紹介いたします。